Bath & Body Works(バス&ボディワークス)— 調香師との協働で、肌と暮らしを香らせるブランド

青いギンガムの香水ボトルとチェック柄のリボンを、明るい庭の背景に配置したバス&ボディワークスのブランド記事サムネイル ブランド創業者

バス&ボディワークスのために私がつくる香りは、それぞれに物語と、強い個性を持っています。

オノリーヌ・ブラン — ギンガムの発表に際して、2019年

Bath & Body Works(バス&ボディワークス)は、1990年にアメリカで始まった、ボディケアとホームフレグランスのブランドである。肌にまとう香水やミストから、部屋を香らせるキャンドルまで、香りを暮らしのさまざまな場面へ届けてきた。

その香りづくりを支えるのは、ブランドの開発担当者と調香師の協働である。どのような人に、どのような気持ちで使ってほしいのか。そうした問いが素材の組み合わせへ移され、試作と顧客の反応を通じて一つの作品になる。

基本情報

  • ブランド開始年:1990年
  • 出発点:The Limited(ザ・リミテッド)の事業として開始。同社の創設者はLeslie Wexner(レスリー・ウェクスナー)
  • 誕生の国:アメリカ
  • 公式サイト:Bath & Body Works

創設者とブランドの成り立ち

1990年、服飾小売企業から始まった香りのブランド

バス&ボディワークスの出発点には、服飾小売の世界がある。ザ・リミテッドを築いたウェクスナーは、1960年代初めに両親の店で働き、女性のスポーツウェアに事業の可能性を見いだした。1963年に自らの会社を始め、衣料品を扱う専門店の事業を広げていった。

1990年、その小売企業の事業としてバス&ボディワークスが始まる。初めは少数の香りからの出発だった。顧客と香りをめぐる好みや思いを共有し、店で香りを楽しむ体験を育てていく。2000年度の時点では、キャンドルを扱うホワイトバーン(White Barn)も事業に含まれていた。

企業をつくった小売経営者と、香りそのものをつくる調香師。その役割は異なる。バス&ボディワークスの創作をたどると、ブランド側が描く使い手の姿と、調香師が提案する香りの表現が、具体的な作品の中で出会う。

2006年、顧客テストから形になった桜の香り

ジャパニーズ チェリーブロッサム(Japanese Cherry Blossom)は、2006年に生まれた作品である。調香を担ったHarry Fremont(ハリー・フレモント)に、当時のブランドの創作を牽引していたCamille McDonald(カミーユ・マクドナルド)は、より複雑な香りを求めた。若い女性だけでなく、その母親の世代にも届くものにしたかったのである。

フレモントが2026年に振り返った、マクドナルドの要望には、ゲランの香水「シャリマー」の名が出てくる。

彼女は「私たちのシャリマーをつくりたい」と言いました。

ハリー・フレモント — カミーユ・マクドナルドの言葉を振り返って、2026年

そこでフレモントは、サンダルウッドとムスク、炊いたバスマティ米を思わせる香りの分子を加えた。しかし顧客グループによるテストを経ると、少し洗練されすぎているのではないか、という反応が開発側から返ってくる。フレモントは、立ち上がりにリンゴと洋梨の香りを戻した。深みを与えることと、親しみを残すこと。その間を調整して、作品は形になった。

この作品が描こうとしたのは、春が始まる瞬間である。咲く桜の軽やかさと、まだ残る冬の温かさを一つにする。原作の20周年となる2026年、フレモントはその対比を次のように表した。

そこには意外な対比があります。輝くような果実と繊細な花が、ムスクやサンダルウッドと出会うのです。

ハリー・フレモント — ジャパニーズ チェリーブロッサムについて、2026年

2019年のギンガムと、2021年の会社の転機

2019年4月には、ギンガム(Gingham)が登場した。手がけたのは、当時フィルメニッヒのマスター調香師だったHonorine Blanc(オノリーヌ・ブラン)である。彼女は、顧客や自然とのつながり、ブランドの明るく前向きな気分を香りにしようとした。発表当時の構成では、フリージアやスミレの花びらに、クレメンタインという柑橘の甘さを添えている。

ジャパニーズ チェリーブロッサムでは、花と温かな背景の対比を調整した。ギンガムでは、花と柑橘を使って明るい気分を組み立てた。作品ごとに異なる狙いを調香師と共有することが、ブランドの香りの世界を広げてきたのである。

2021年には、企業としての大きな転機を迎える。親会社エル・ブランズ(L Brands)はヴィクトリアズ・シークレット事業を分離し、社名をバス&ボディワークスへ変更した。1990年から育ってきたブランドが、独立した上場会社として歩む体制になったのである。

ブランドのこだわり

香水・ボディケア・部屋をつなぐ香りの展開

バス&ボディワークスは、一つの香りを、肌にまとうものと日常のケア、室内の空間へ展開する。ギンガムは発売当初から、オードパルファムやフレグランスミスト、ボディケア、キャンドル、室内用のウォールフラワーという複数の形を持っていた。

ジャパニーズ チェリーブロッサムも、ボディケアから始まり、顧客の要望に応じてキャンドルや室内用へ広がった。同じ香りの世界に、肌と部屋の両方から触れられる。その展開には、香りを日々の習慣へ結びつける、ブランドの特徴が表れている。

原作の包容感を、新しい桜の香りへ受け継ぐ

2026年の20周年に加わったフォーエバー チェリーブロッサム(Forever Cherry Blossom)は、原作を現代的に解釈した別の作品である。制作に携わったのは、香料会社アイ・エフ・エフ(IFF)の調香師Patricia Hidalgo(パトリシア・イダルゴ)。彼女が残そうとしたのは、原作の包み込むような背景だった。

オリジナルの核は、女性らしさと、包み込むような心地よい背景にあります。

パトリシア・イダルゴ — フォーエバー チェリーブロッサムの制作について、2026年

フォーエバー チェリーブロッサムは、桜の花びらやマグノリア、みずみずしい洋梨に、クリーミーなサンダルウッドと温かなムスクを合わせる。花や果実の表情を新しくしながら、背景の心地よさを引き継ぐ。原作のどこを残し、何を変えるかという判断に、長く続く作品との向き合い方が見える。

協力企業とのものづくりと、香りに合わせた製品設計

香りを日常の製品へ移す仕事には、製造や容器を担う協力企業も関わる。オハイオ州ニューアルバニーのビューティーパークは、サプライヤーが集まる拠点で、研究開発、処方や製品の製造、包装づくりなどを支えている。本社に近い場所での協働が、顧客の好みの変化に対応する仕組みの一つになっている。

香りを届ける方法に応じた調整は、キャンドルの芯にもある。綿、綿と紙、レーヨンという素材から、香りごとに燃焼の状態を確かめて芯を選ぶ。部屋に香りを広げる製品では、香料の組み合わせに加えて、それを燃やす仕組みも設計の一部なのである。

青いガラスとチェック柄を使うボトルデザイン

現在のギンガムのオードパルファムは、丸みのある青いガラスの瓶に、濃い青のキャップを合わせている。首元には青と白のチェック柄のリボンを結び、正面には手書き風の作品名を置く。明るい気分を題材にした香りが、色と布の質感を持つ一瓶として形になっている。

ちなみに…

香りを試す場所にも、変化がある。2025年に紹介された新しい店舗形式「ギンガムプラス(Gingham+)」では、一部の店に、キャンドルやウォールフラワー、フレグランスミストを試せるセントバーが設けられた。顧客が実際に試してから選びたいという声を、店のつくりにも反映したものだ。香りと使い手の対話は、試作の場だけでなく、店頭にも続いている。

参考文献

  1. Bath & Body Works公式発表 — ギンガムとオノリーヌ・ブランの制作意図(2019年3月14日) — https://www.prnewswire.com/news-releases/bath--body-works-announces-launch-of-gingham-300812122.html
  2. Bath & Body Works公式 — 1990年からのブランドの歩み — https://www.bbwinc.com/about-us/personal-care-home-fragrance
  3. Bath & Body Works公式発表 — ヴィクトリアズ・シークレット事業の分離と社名変更(2021年8月3日) — https://investors.bbwinc.com/news-releases/news-release-details/bath-body-works-inc-completes-separation-victorias-secret
  4. Farah Stockman/The New York Times、The Philadelphia Inquirer掲載 — ジャパニーズ チェリーブロッサムの制作談(2026年7月18日) — https://www.inquirer.com/business/bath-body-works-scent-sales-japanese-cherry-blossom-20260718.html
  5. The Limited, Inc. — 2000年度の年次報告書、バス&ボディワークス事業の沿革 — https://investors.bbwinc.com/node/11546/html
  6. Harvard Business School — レスリー・ウェクスナーの小売事業の出発点 — https://www.hbs.edu/leadership/20th-century-leaders/details?profile=leslie_wexner
  7. Bath & Body Works公式発表 — ジャパニーズ チェリーブロッサムの20周年と新たな展開(2026年4月7日) — https://www.globenewswire.com/news-release/2026/04/07/3269248/0/en/bath-body-works-celebrates-20-years-of-japanese-cherry-blossom-an-elevated-fragrance-icon.html
  8. Rachel Lapidos/Bustle — パトリシア・イダルゴらが語るチェリーブロッサムの新たな制作(2026年4月7日) — https://www.bustle.com/beauty/bath-and-body-works-japanese-cherry-blossom-20th-anniversary-behind-the-scenes
  9. Bath & Body Works公式 — サプライヤーとの協働とビューティーパーク — https://www.bbwinc.com/product/supply-chain
  10. Bath & Body Works公式 — 製品開発と香りに応じたキャンドルの芯の選択 — https://www.bbwinc.com/product/product-development-formulation
  11. Bath & Body Works公式 — 現行ギンガム オードパルファムとボトルデザイン — https://www.bathandbodyworks.com/p/gingham-eau-de-parfum-028023263
  12. Bath & Body Works公式 — ギンガムプラスの店舗づくりと試香の場(2025年3月12日) — https://www.bbwinc.com/media/stories/introducing-gingham-bath-body-works-latest-store-design