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title: "嫌なにおいがすると、「近づく」操作が少し遅くなる？"
description: "合成体臭の後では、画面の香水瓶へ近づくキー操作がé� くなりました。音の実験と合わせ、好き嫌いを行動から測る方法を探っています。"
url: https://lechercheurdeparfum.com/unpleasant-odor-simulated-approach-response/
date: 2026-10-13
modified: 2026-10-13
author: "Root"
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categories: ["香りの科学"]
tags: ["感じ方・記憶・気分"]
type: post
lang: ja
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# 嫌なにおいがすると、「近づく」操作が少し遅くなる？

嫌なにおいのする物には、近づくのをためらう。そんな日常の感覚を、画面上の操作の速さから捉えようとした研究があります。合成した体臭を嗅いだ後では、無臭や快い香料の後より、画面の香水瓶へ「近づく」操作を始める反応が遅くなりました。

2021年のこの研究は、人が本当に歩いて近づく距離を測ったものではありません。音とにおいの二つの実験を通して、画面の動きとキー操作を組み合わせた課題を、好き嫌いを直接尋ねない評価法へ応用できるか調べています。

## 近づく・遠ざかる感覚を、画面でつくる

使ったのは、VAASTという実験課題を改変した方法です。参加者は、画面に映った部屋の中の物に対して、近づくキーか遠ざかるキーを押します。正しく押すと画面全体が10％ずつ拡大または縮小し、自分が前後へ動いているように見えます。

一回の移動にはキーを三回押しますが、解析したのは、最初のキーを押すまでの時間と正確さです。研究者は、快い刺激なら近づく操作が速く、不快な刺激なら遠ざかる操作が速いのではないかと予測しました。

また、従来の画面上の単語だけを使う課題から、音のするスピーカーや香る瓶へ広げることも目的でした。生活場面を模した背景の中で、好き嫌いそのものを回答させなくても、刺激の性質が操作へ現れるかを試しています。

## まず、音の質で方法を確かめた

最初の実験には大学生26人が参加し、技術的な問題のあった1人を除く25人を解析しました。画面には居間とスピーカーが映り、ヘッドホンからフランス語の単語が流れます。単語は生き物か無生物の名前で、その分類に応じて近づくか遠ざかるかを操作しました。

音には、歪みのないもの、少し歪ませたもの、中程度に歪ませたものを用意しました。単語の意味は中立にし、音質の低下が不快さにつながると想定しています。参加者が判断するのは単語の分類で、音を好きか嫌いかではありません。

近づく最初の操作は、歪みなしで平均886ミリ秒、少し歪ませた音で915ミリ秒、中程度で925ミリ秒でした。歪みなしでは二つの歪み条件より速い結果です。一方、遠ざかる操作には音質による有意差はなく、正答率にも明確な条件差はありませんでした。予測された反応の違いは、接近側に現れました。

## においの実験では、瓶の傾きだけを判断する

次の実験には、Firmenich社の各部門から募集した26人が参加しました。女性18人、男性8人で、平均年齢は45.1歳です。

予備試験で選んだ刺激は、快い香料、合成体臭、無臭の溶媒の三つでした。快い香料は、フローラル、グリーン、ゼラニウム、シトラスなどの特徴を持つ、デオドラント製品の香りです。快い香料と合成体臭は、快不快の差が大きく、強さや親しみの差は小さくなるよう選ばれています。

本試験の参加者も、最初に香りの快さ、強さ、親しみを評定しました。快さは香料、無臭、合成体臭の順でした。香料と合成体臭の強さ・親しみには有意差がありませんでしたが、これは両者の完全な同等性を保証するものではありません。

画面には浴室と香水瓶を映し、参加者には、その瓶からにおいが来るという設定を説明しました。においを嗅いだ後に瓶が左か右へ傾き、その向きに応じて接近・後退のキーを押します。左右と移動方向の対応は参加者間で入れ替えました。

一回のにおい提示の後に四回の傾き判断を行い、合計96回の反応を測っています。ここで「暗黙的な評価」と呼ぶのは、操作中に好き嫌いを答えさせないという意味です。参加者はにおいの存在を知らされ、事前の評定も行っていました。

## 合成体臭は、接近操作を遅らせた

においの影響は、今回も接近側に現れました。近づく最初のキー操作までの平均時間は、合成体臭で661ミリ秒、無臭で626ミリ秒、快い香料で636ミリ秒です。合成体臭では、無臭や香料より反応が有意に遅くなりました。

快い香料と無臭の差は有意ではありません。したがって、結果の中心は「よい香りが接近を速めた」というより、「不快な合成体臭が接近の操作を遅らせた」ことにあります。遠ざかる操作は、三つのにおい条件で有意差がありませんでした。

正確さは後退操作の方が接近操作よりわずかに高かったものの、においによる有意な変化はありませんでした。においの影響は、課題全般の正答率を落とす形ではなく、移動方向と組み合わさった反応時間の違いとして見つかっています。

## 好き嫌いを調べる道具として、どこまで使えるか

音とにおいの両方で、刺激の質によって接近操作の速さが変わりました。とくに嗅覚の課題では、におい自体を分類する必要もなく、瓶の向きだけを判断していました。感情に直接言及しない作業にも、先に嗅いだにおいの影響が表れた点が、この方法の手がかりです。

一方、不快な刺激で後退が速くなるという予測は、どちらの実験でも支持されませんでした。著者らは、今回の刺激や場面は恐怖を伴う危険として受け取られにくかった可能性を挙げ、今後は接近と移動しない条件の比較なども検討しています。この説明は、今回直接測定した恐怖の結果ではなく、接近と後退で異なる結果を理解するための仮説です。

また、においでは快い香料と不快な合成体臭という、かなり離れた刺激を使いました。似た香水同士の微妙な好みを判別できるか、画面上の反応が実際の商品選択や購買に結び付くかは、これから確かめる段階です。小人数の社内標本という条件も含め、この方法は消費者評価を補う候補として位置付けられます。

## まとめ

合成体臭を嗅いだ後は、無臭や快い香料の後より、画面の香水瓶へ近づく最初の操作が遅くなりました。音の実験でも、歪ませた音では歪みのない音より接近操作が遅くなりました。一方、遠ざかる操作には、いずれも刺激条件による明確な差がありませんでした。

研究が示したのは、好き嫌いをその場で質問しなくても、音やにおいの性質が、模擬的な接近操作の時間に現れることです。言葉による評定に、行動の指標をどう組み合わせるか。その評価法づくりが、この研究の成果です。

研究はフランス国立研究機構ANRの支援を受けています。論文では、研究当時のFirmenich所属著者2人のほか、Orange Labs、PSA Groupe、Silliker／Mérieux NutriSciences所属の著者がいることを開示しています。

**参考文献**

Cereghetti, D., Faye, P., Gros, L., Mahé, L., Diaz, E., Cayeux, I., Heritier, T., & Versace, R. (2021). Validation of New Methods of Using Simulated Whole-Body Movements as Implicit Indicators of Sound and Odor Preferences. *Frontiers in Psychology*, 12, 659269. [原著論文](https://doi.org/10.3389/fpsyg.2021.659269)
