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title: "パックごはんに、炊きたての香りを残せるか"
description: "吸水中に容器を動かすレトルト工程を3種類の米で比較。初期の熱移動は改善しましたが、香り成分の保持には課題が残りました。消費è€ の関心も調べています。"
url: https://lechercheurdeparfum.com/retort-rice-aroma-processing/
date: 2026-10-14
modified: 2026-10-14
author: "Root"
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categories: ["香りの科学"]
tags: ["食べ物・暮らしの香り"]
type: post
lang: ja
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# パックごはんに、炊きたての香りを残せるか

容器に入ったごはんを手軽に温めても、炊きたての香りを楽しめるでしょうか。2020年の研究では、米と水を容器に詰め、吸水する段階で容器を往復させる方法を試しました。初期の熱の伝わりはよくなった一方、香り米の重要な香気成分は炊飯器で炊いた場合より少なくなりました。

この論文は、香りの分析だけでなく、加熱工程、でんぷんや色の品質、さらに消費者が便利なごはんに何を求めるかを組み合わせた研究です。

## 容器の中で吸水させ、そのまま加熱する

比較したのは、米国の香り米クリアフィールド・ジャズマン、タイ・ジャスミン、香り米ではないパーボイルド米の3種類です。乾いた米128 gと水141 gを容器に入れて密封し、吸水と加熱を容器内で行いました。同じ米と水の比率で電気炊飯器でも炊き、比較しています。

レトルト工程では、動かさない条件と、毎分45、90、130往復させる条件を用意しました。往復運動を使うのは、加熱初期と60℃で10分間保持する吸水段階です。その後は静置してレトルト加熱しました。でんぷんが大きく糊化する前に、米へ水と熱を均一に届けようという狙いです。

各工程は2回行い、1回につき10容器を用意しました。うち4容器では温度を測り、残りを成分や品質の分析に使っています。

## 吸水段階の熱移動は改善、全体の時間短縮は別の課題

往復運動を加えると、吸水段階では容器内の温度が装置の温度に早く近づきました。ただし毎分90往復と130往復の違いは小さく、運動を止めた後の熱の伝わり方は似ていました。米のでんぷんが糊化した後まで動かし続けても、熱移動は改善しませんでした。

加熱殺菌の条件をそろえて計算した加熱時間では、静置と毎分130往復の間に有意差はありませんでした。したがって、今回確かめられた利点は主に初期の吸水・熱移動です。製造工程全体が短くなった、という結果まで得られたわけではありません。

## 香りの成分は、炊飯器より少なくなった

香り米2種類では、2-アセチル-1-ピロリン（2-AP）を測りました。ポップコーンやバターを思わせる香りに関わる、香り米の代表的な成分です。分析用には試料を凍結乾燥して粉砕しています。

原著の表では、クリアフィールド・ジャズマンの2-APは炊飯器で0.776 ppm、レトルトの静置条件で0.083 ppm、往復運動を加えた条件で0.030〜0.065 ppmでした。タイ・ジャスミンは炊飯器で0.271 ppm、静置で0.030 ppm、往復運動ありで0.006〜0.007 ppmでした。どちらもレトルト加工後は少なくなり、往復運動を加えれば香りが残るという単純な結果にはなっていません。

今回の試料では、クリアフィールド・ジャズマンは加工後にもタイ・ジャスミンより多くの2-APを残していました。著者らは、この米での保持のよさに注目しています。炊飯器で炊いた対照の段階でも成分量が異なるため、残った濃度の高さを、そのまま残存率の高さとはみなせません。工程と米の選択を一緒に考える必要があります。

なお、原著には減少を一律に「15倍」や「10〜100倍」と表現する箇所がありますが、表の条件別の値とそろいません。ここでは表の実測値で紹介しました。また、2-APは香りの一指標であり、食べたときの香り全体や好みを人が評価した結果ではありません。

## でんぷんや色は、大きく変わりにくかった

難消化性でんぷん、消化されるでんぷん、その合計には、各米の炊飯器対照と比べて有意差がありませんでした。一方で、クリアフィールド・ジャズマンの高い往復速度の条件ではアミロースが多く、パーボイルド米の最高速度条件では総でんぷんが多いなど、個別の違いもありました。難消化性でんぷんを増やす方法としての効果は、この結果からは確立していません。

色の違いには、加工速度だけでなく米の種類が大きく関わりました。静置レトルトと往復運動ありの色差は多くの条件で小さく、炊飯器との違いの方が大きい傾向でした。これらは測色計による結果です。食感の機器測定や、食べたときの硬さ・粘りの官能評価は行っておらず、著者らも実用化に向けた課題として挙げています。

## 消費者が重視するのは、香りや米そのものだけではない

もう一つの柱は、米国南東部の消費者199人への調査です。対象には地域と世帯所得の条件があり、全米や日本の代表標本ではありません。参加者は米を試食せず、調理、食事への取り入れ方、便利さ、包装に関する説明文の組合せを読み、「買って使いたいか」を評価しました。

回答を分析すると、おおむね三つの関心のまとまりが見つかりました。一つ目は缶・プラスチック・パウチや再使用、リサイクルなど、包装の説明に反応する人たち。二つ目は、忙しい日に手軽に食べられ、いろいろな料理に使え、満腹感も得られるという米の役割を重視する人たちです。三つ目は、必要量だけ温める、まとめて炊いて保存するといった調理や食事準備を重視する人たちでした。

原著では群別人数の合計が全体人数と1人ずれ、強い反応と判定する係数の基準にも記載差があります。そのため細かな群割合より、関心の内容が一様ではないという結果に注目するのが適切です。説明への購入意向と、実際の購入や食べたときの満足度も区別する必要があります。

## まとめ

容器を往復させる方法は、米を容器内で吸水させる段階の熱移動を改善しました。でんぷんや色の変化は比較的小さい一方、香り米の2-APは炊飯器で炊くより大きく減り、今回の試料ではクリアフィールド・ジャズマンの方が加工後に多く残りました。香りを保つには、吸水工程だけでなく品種と加熱条件の工夫が引き続き必要です。

消費者調査からは、包装、便利な米食、調理・保存のしかたという異なる関心も見えてきました。手軽なごはんの開発には、成分を残す技術と、使う人にとって何が便利なのかを知ることの両方が役立ちます。

研究はLSU AgCenterのHatch事業とBoard of Regentsの支援を受け、研究所から米の提供がありました。研究当時、筆頭著者はルイジアナ州立大学とNestlé Purina PetCare Companyに所属し、工程設計、分析、執筆などに参加しました。共著者にはMind Genomics Associates所属者も含まれます。著者らは利益相反なしと申告し、資金提供者は研究設計・解析・執筆・出版判断に関与しなかったとしています。

**参考文献**

Dixon WR, Morales-Contreras BE, Kongchum M, et al. Aroma, Quality, and Consumer Mindsets for Shelf-Stable Rice Thermally Processed by Reciprocal Agitation. *Foods*. 2020;9(11):1559. [doi:10.3390/foods9111559](https://doi.org/10.3390/foods9111559)
