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title: "材料が違う30成分でも、似た香りに近づく「嗅覚の白」"
description: "å¹ 広い特徴と感じる強さをそろえて混ぜると、å ±通成分がなくても似た香りになる。名前の学習、半年後の記憶、バラの認識が変わる実験まで紹介します。"
url: https://lechercheurdeparfum.com/olfactory-white-many-component-mixtures/
date: 2026-10-13
modified: 2026-10-13
author: "Root"
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categories: ["香りの科学"]
tags: ["感じ方・記憶・気分"]
type: post
lang: ja
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# 材料が違う30成分でも、似た香りに近づく「嗅覚の白」

使っている成分が一つも同じでないのに、混ぜると似たにおいになる。2012年の研究では、感じる強さをそろえ、幅広い特徴の香り成分を混ぜると、約30成分以上で混合物同士のにおいが似てくることが示されました。

研究者はこの共通した感覚を「嗅覚の白」と呼びました。光の白やホワイトノイズになぞらえた名前で、無臭という意味ではありません。成分一つ一つの違いを超えて、全体として似たまとまりが生まれる現象です。

## 数だけでなく、強さと特徴の広がりをそろえる

研究の出発点は、視覚や聴覚との比較でした。さまざまな波長や周波数を広い範囲で組み合わせ、強さをそろえると、白い光やホワイトノイズになります。においでも同じような条件をつくれるのか、という問いです。

研究者は、香りの印象と分子の性質が幅広く分布する86成分を選びました。24人による評価を使い、各成分を薄めて、感じる強さをおおむねそろえています。同じ濃度にしたのではなく、人が感じる強さを合わせた点が重要です。

また、液体の中で新たな化学反応が起きることを避けるため、各成分を吸着パッドに加え、容器の上部で蒸気が混ざるようにしました。成分の組み合わせは、香りや物性の特徴が偏らないように計算で選んでいます。

研究全体には21〜40歳の計208人が参加し、強度調整、類似度、識別、名前による分類、記憶との照合など、異なる課題を担当しました。最初の類似度試験の人数は、結果欄に56人、方法欄に59人という記載差があります。

## 成分が増えるほど、共通成分がなくても似てきた

類似度試験では、1、4、10、15、20、30、40、43成分の混合物を組み合わせ、計191対について、どれくらい似ているかを評価しました。同じ試料同士の対照を除き、比較する二つの混合物には共通成分がありません。

それでも、混合する成分が多くなるほど、においは似てきました。およそ30成分になると、組成の異なる混合物がかなり似たものとして受け取られました。

一方、20人が行った三択の識別課題では、多成分になるほど正答率と自信は下がったものの、30成分でも偶然を上回って区別できました。「似たまとまりになる」ことと、「まったく区別できなくなる」ことは別でした。

## 知らない混合物にも、覚えた同じ名前を当てはめた

次に研究者は、共通したまとまりを名前で捉えられるかを調べました。「白」という言葉から連想を与えないよう、混合物に意味のない名前「Laurax」を付けました。

参加者は自分に割り当てられた40成分のLauraxを3日間嗅いで覚え、4日目に新しい混合物を分類しました。成分数が多い新しい混合物ほど、Lauraxという名前が選ばれました。「その他」という選択肢を加えた別の試験でも、同じ方向の結果が得られています。

さらに、覚えたLauraxと成分が一つも重ならない混合物を使い、記憶だけを頼りにLauraxかどうかを判断する試験も行いました。少ない成分の混合物は違うと判断しやすい一方、20〜30成分では識別が偶然を上回るとはいえませんでした。これは、目の前で嗅ぎ比べる三択課題とは異なり、記憶との照合で得られた結果です。

## 何でも30種類混ぜればよい、という現象ではない

研究者は追加の58成分も強度調整し、合計144成分から組み合わせを選ぶ試験を行いました。特徴が広く散らばる混合物と、比較的似た特徴に偏る混合物、成分は同じでも強さをそろえていない混合物を比べています。

特徴に偏りがある混合物は、覚えたLauraxと異なると判断されやすくなりました。同じ組成でも強さをそろえないと、Lauraxとの類似度が下がりました。今回の条件では、特に特徴の広がりが大きく影響しました。

自然のコーヒーやバラが多くの成分を含んでも同じにおいにならない理由として、著者らは、成分の特徴も強さも均等ではないことを挙げています。約30という数は、この研究で選んだ成分と調整方法で得られた目安です。

## 「白」はどんなにおいで、どれくらい覚えていた？

別の20人による評価では、嗅覚の白は、快い・不快の軸でも、食べられそう・有害そうという印象の軸でも、おおむね中間に位置しました。これは実際の安全性を調べた尺度ではなく、嗅いだ印象の評価です。全成分を薄めて強さを合わせたため、全体のにおいも圧倒的に強いものではありませんでした。

約6か月後には、過去にLauraxを覚えた20人を再び調べました。新しい多成分混合物にLauraxという名前を付ける割合は、選択肢数に応じた偶然の割合を上回り、共通した印象が記憶に残っていることが示されました。

この試験では、バラを表す4成分の混合物と、その4成分に別の26成分を加えた混合物も比較しました。4成分だけなら70％の試行でバラと答えましたが、30成分の混合物ではバラという回答は7％になり、Lauraxという回答が約60％でした。元の成分が残っていても、全体のまとまりが変わると、バラとしての認識が目立たなくなったのです。

## まとめ

幅広い特徴の成分を、感じる強さをそろえて混ぜると、成分が重ならない混合物同士でも似てきました。その共通した印象はLauraxという名前で学習され、約6か月後にも分類の手掛かりとして残りました。

嗅覚の白は無臭でも、完全に区別できない一つのにおいでもありません。研究が示したのは、香りの全体像が、分子名の一致だけでなく、特徴の広がりと強さの配分から生まれることです。著者らは、嗅覚が個々の分子の名前に相当する情報だけでなく、その特徴をまとめて扱うという考えを支持する結果と位置付けています。脳活動そのものは、この実験では測っていません。

研究はJames S. McDonnell Foundation、欧州研究会議、イスラエル科学技術省の日イスラエル共同助成などの支援を受けています。研究当時、ワイツマン科学研究所の技術移転部門が、嗅覚の白の応用に関する特許出願を準備していると開示されています。共著者1名は当時Via-Scentに所属していました。

**参考文献**

Weiss T, Snitz K, Yablonka A, et al. Perceptual convergence of multi-component mixtures in olfaction implies an olfactory white. Proceedings of the National Academy of Sciences. 2012;109:19959–19964. [原著論文](https://doi.org/10.1073/pnas.1208110109)
