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title: "同じ香料でも、強さが違う？ 鼻の受容体と人それぞれの感じ方"
description: "332人の遺伝子とにおいの評価を、培養細胞の受容体反応と比較。単一の受容体でも強さや快さに関わる例と、個人差を説明できる範囲を紹介します。"
url: https://lechercheurdeparfum.com/olfactory-receptor-genetic-variation-perception/
date: 2026-10-13
modified: 2026-10-13
author: "Root"
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categories: ["香りの科学"]
tags: ["感じ方・記憶・気分"]
type: post
lang: ja
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# 同じ香料でも、強さが違う？ 鼻の受容体と人それぞれの感じ方

同じ香料を嗅いでも、「かなり強い」と感じる人と「それほどでもない」と感じる人がいます。その違いの一部は、鼻にあるにおい受容体の働きと結び付いています。

332人の遺伝子とにおいの評価を照らし合わせ、さらに受容体を細胞で調べた2019年の研究では、**1種類の受容体の違いでも、特定のにおいの強さや快さに関わる**例が見つかりました。多数の受容体が協力する嗅覚の中で、一つひとつの受容体が担う役割を探った研究です。

## 人による違いから、鼻の仕組みを調べる

人には約400種類の機能し得る嗅覚受容体があり、一つのにおい物質が複数の受容体を刺激します。そのため、一つの受容体の反応が弱くても、ほかの受容体が補って感じ方は変わらないのか。それとも、特定の受容体が重要な情報を担うのか。この問いが研究の出発点でした。

受容体を作る遺伝子には、人によって自然に生じる配列の違いがあります。研究チームは、そうした違いを手掛かりに、受容体の反応から「強い」「心地よい」という知覚へつながる仕組みを調べました。個人差の記録に加え、細胞を使ってその背景を確かめた点が特徴です。

## 332人の遺伝子を、276の嗅覚指標と比較

もとになる心理実験には391人が参加し、66種類のにおいを2濃度で、これに2種類の溶媒を加えて、強さと快さを7段階で評価していました。各刺激を2回評価し、解析では、評価点を各人の中での順位に換算しています。人による点数の付け方の違いを抑えて比べるためです。

そのうち332人について、418の嗅覚受容体遺伝子を含む領域を解析しました。濃度別の強さ・快さに加え、3種類の物質をどれほど薄くしても検知できるかという閾値や、全体的な嗅覚能力を含め、計276指標との関連を調べています。年齢、性別、遺伝的な祖先集団に関連する成分も解析に組み込みました。

多数の組み合わせを検定すると、偶然の関連も出やすくなります。そのため多重比較を補正したところ、8つの知覚指標で、単一の受容体を含む遺伝子領域との有意な関連が残りました。上位の関連は、快さよりも強さに多く見られました。

## 遺伝子の関連だけで、受容体を決めない

遺伝子同士が染色体上で近いと、配列の違いが一緒に受け継がれやすくなります。ある遺伝子との統計的な関連が強くても、その受容体が実際ににおいを受け取っているとは限りません。

分かりやすい例が、2-エチルフェンコールです。この物質の強さの評価は、近くに並ぶOR11A1、OR12D2、OR10C1という3種類の受容体遺伝子の違いと関連し、統計的にはOR10C1の変異が最も強く結び付いていました。

ところが、主な配列型を細胞に作らせて反応を測ると、この試験で反応したのはOR11A1でした。さらに、細胞で反応が弱かったOR11A1の型は、人が低い強さを報告することと対応しました。**人での関連と細胞での反応を重ねることで、働いている受容体の候補を絞れた**のです。

## 弱い受容体ほど弱く感じる例が多いが、方向は一つではない

細胞での検証は、厳しい統計基準を通ったものだけでなく、探索対象を広げた上位50の関連を手掛かりに行われました。重複する領域などを整理した36の遺伝子領域とにおいの組み合わせを調べ、14種類の反応する受容体を見つけました。

最終的に、細胞で測った受容体の機能の違いと、人の強さ・快さの評価が対応したのは10の受容体とにおいの組み合わせでした。うち3例は既報の確認、7例は新しい対応です。この10例は、最初の多重比較補正で残った8指標とは異なる検証段階の数です。

10例中8例では、受容体の機能が低い型を持つことが、弱く感じることと関連しました。ただし、反応が弱いほど強く感じる例や、快さが変わる例もありました。

例えばリナロールでは、OR1C1の反応低下は低い強さの評価と対応する一方、OR2A25では反応低下が高い強さの評価と対応しました。同じ物質でも、どの受容体に着目するかで関係の向きが異なります。快さについても、受容体の機能低下に伴って上がる場合と下がる場合がありました。

また、関連の強さはにおいの濃度によって変わりました。薄いときと濃いときでは参加する受容体の組み合わせが変わるという考えと整合します。一方、今回調べた3物質の検知閾値については、細胞検証へ進めるほど強い単一受容体との関連は得られませんでした。「どれほど薄くても気付けるか」と「十分にあるとき、どれほど強く感じるか」は分けて考える必要があります。

## 個人差のどこまで説明できたか

研究チームは、各指標と最も関連する単一受容体の型、遺伝的な祖先集団に関連する成分、年齢、性別の4要因で、評価のばらつきをどれほど説明できるかも調べました。

15指標では10〜20％を説明できましたが、276指標全体の中央値は4.77％でした。説明できる割合は物質や測り方によって異なり、受容体一つの型だけで好みが決まるという結果ではありません。この割合は、嗅覚全体の遺伝率や、個人の好みを当てる正答率とも異なります。

祖先集団に関連する成分との結び付きも見られましたが、著者らは、遺伝的な影響と、それに重なり得る文化・社会的な経験をこのデータから分離できないとしています。また、遺伝的に全体として似ている人同士ほど、においの感じ方も全体として似ている、という単純な関係は得られませんでした。

## 人の鼻と、培養細胞を往復して見えてくるもの

この研究では、別の参加者集団で関連を再現するところまでは行っていません。細胞実験が追加の根拠になっていますが、細胞の試験系には鼻の粘液や、におい分子を運搬・変換する仕組みがすべてそろっているわけではありません。

実際、人で強い遺伝的関連があっても、細胞では反応する受容体を特定できない例がありました。その一つであるジアセチルでは、受容体OR6Y1をほかの動物の配列を参考に改変すると反応が現れ、候補を支持する手掛かりになりました。細胞で反応しない結果を、そのまま鼻でも無関係とみなさない工夫です。

## まとめ

多くの受容体が組み合わさる嗅覚でも、特定の受容体一つの機能の違いが、においの強さや快さに関わることが示されました。機能と知覚が対応した10例のうち8例では、受容体の反応が低い型は低い強さの評価と結び付いていましたが、リナロールのように受容体によって方向が異なる例もありました。

さらに、年齢などを合わせても説明できる個人差は指標ごとに異なりました。同じ香料の感じ方が違う背景を、鼻の受容体という具体的な入口から理解しつつ、濃度や複数の受容体、経験も含めて考えるための研究です。

米国NIHやサンパウロ研究財団などが支援。論文では、共著者J. D. Mainlandが当時Aromyxの科学顧問を務め、報酬を受けていたことが開示されています。

**参考文献**

Trimmer C, et al. (2019). Genetic variation across the human olfactory receptor repertoire alters odor perception. *PNAS*, 116(19), 9475–9480. [原著論文](https://doi.org/10.1073/pnas.1804106115)。
