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title: "冷蔵庫の中でも、納豆の香りは変わり続ける"
description: "4℃で保存した納豆では、果実様のエステル類が減り、ナッツ様やチーズ様の成分が増える傾向がありました。複数の香りがつくる変化をたどります。"
url: https://lechercheurdeparfum.com/natto-refrigeration-aroma-changes/
date: 2026-10-13
modified: 2026-10-13
author: "Root"
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categories: ["香りの科学"]
tags: ["食べ物・暮らしの香り"]
type: post
lang: ja
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# 冷蔵庫の中でも、納豆の香りは変わり続ける

冷蔵庫に入れた納豆も、香りがそのまま止まるわけではありません。2012年の研究では、4℃での保存中に、果実のような香りに関わるエステル類が減り、ナッツ様のピラジン類や、チーズ様の分岐脂肪酸が増える傾向が見られました。

研究者たちは、市販納豆の主要なにおいを調べる実験と、実験室でつくった納豆を日数ごとに追う実験を組み合わせ、冷蔵中に変わる香りの中身を探っています。

## 市販品のにおいを探し、製造直後からも追う

最初の対象は、購入直後の市販の糸引き納豆と、購入後に4℃で1週間保存したものです。水蒸気蒸留と溶媒への抽出で香気成分を集め、濃縮した液を段階的に薄めました。装置で分離した成分を人が嗅ぐ方法で、薄くしても残る主要なにおいを探し、質量分析などで物質を確認しています。

ただし、市販品には大きなばらつきがありました。同じメーカーの同じブランドでも、製造日が違うと、どの希釈段階までにおうかが異なり、購入直後と冷蔵後の大小関係が逆転する成分もありました。論文の表は、複数回調べた中の一例です。

そこで別の実験として、大豆と納豆菌、製造条件を定めて実験室で納豆をつくりました。40℃で20時間発酵させた後、4℃で保存し、発酵直後、1、2、4、8、16日後の成分を追っています。

こちらは、試料の上の空気から細い吸着材へ成分を集めるSPME法を使い、分析ピークと内部標準の比を比較しました。採取時には50℃で60分抽出しており、冷蔵庫の中の空気を直接測った値ではありません。各試料の分析を5回行っていますが、これは独立した製造バッチが5つという意味ではありません。

## 納豆にも、果実様の香りがあった

市販品の分析では、イソ酪酸エチルや2-メチル酪酸エチル、イソ吉草酸エチルなど、果実様の香りを持つ脂肪酸エステル類が、主要なにおい成分の一群として捉えられました。納豆らしい強いにおいの中にも、質の異なる香りが重なっているのです。

実験室製造品では、これらのエステル類は発酵後に検出され、冷蔵中に減少する傾向がありました。市販品でも一部のエステルは、1週間後に、より薄い段階まで検出されなくなっていました。

著者たちは、エステル類の減少が、冷蔵中の香りの変化に大きく関わると考えています。単に強いにおいが増えるだけでなく、果実様の要素が弱まることも、全体の印象を変える可能性があります。

## ナッツ様、チーズ様の要素は強まる傾向

別の主要な一群が、2,5-ジメチルピラジンやトリメチルピラジンなどのピラジン類です。分離して嗅ぐとナッツ様の香りを持ちます。実験室製造品の冷蔵中の分析では増加傾向があり、納豆全体の官能的な観察でも、日数が進むとナッツ様のにおいが強くなったように感じられました。

イソ酪酸、2-メチル酪酸・イソ吉草酸など、チーズ様の香りを持つ分岐脂肪酸も、保存中に増える傾向を示しました。一方、大豆にもともと由来する香気成分の多くは、発酵や冷蔵中に減り、納豆全体への寄与が小さくなると考えられました。

これらは成分群としての傾向です。個々の成分が、毎日途切れなく増え続けたわけではありません。酢酸については本文と要約で増減の扱いに差があり、図でも一方向の変化ではないため、ここでは「冷蔵で増える脂肪酸」の一律の例には含めません。

## 低温でも、成分の生成と消失のバランスが変わる

著者たちは、ピラジン類の生成について、発酵で生じたアセトインなどと、微量のアンモニアが反応する経路を考察しています。分岐脂肪酸については、アミノ酸の分解が関わると考えました。エステル類には、こうした脂肪酸とエタノールからの生成や、その後の揮発・分解が関わる可能性があります。

今回の実験は、成分の増減を追うことでそれらの説明を検討したもので、反応経路を標識物質などで直接追跡したものではありません。冷蔵中の香りを、残っている成分、減る成分、新しく生じる成分の組み合わせとして見る研究です。

実験室製造品では、冷蔵期間が長くなってもアンモニア臭は感じられなかったと報告されています。ただし、においとして感じなかったことから、アンモニアが存在しない、あるいは食品が安全だとは判断できません。この研究は保存期限や食用安全性を決める試験ではありません。

## まとめ

糸引き納豆の冷蔵中には、果実様のエステル類が減り、ナッツ様のピラジン類やチーズ様の分岐脂肪酸が増える傾向がありました。大豆由来の成分も減少し、全体の香りのバランスが変わっていきます。

一方、市販品でも実験室製造品でも試料間のばらつきがあり、同じ日数で同じ変化が起こるとは限りません。納豆の香りは、単一の「納豆臭」ではなく、冷蔵中にも動く複数の香りの重なりだと分かる研究です。

著者は、論文掲載時に共立女子短期大学、共立女子大学、新潟県立大学、愛国学園短期大学に所属していました。独立した研究資金・利益相反の申告欄は確認できませんでした。

**参考文献**

田中直義・木村小百合・木内幹・鈴木あゆ野・村松芳多子・三星沙織（2012）「冷蔵中における糸引き納豆のにおいの変化」*日本食品科学工学会誌*、59(4)、167–174。[doi:10.3136/nskkk.59.167](https://doi.org/10.3136/nskkk.59.167)（[原著全文](https://www.jstage.jst.go.jp/article/nskkk/59/4/59_167/_pdf/-char/ja)）
