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title: "ブドウなのにライチの香り。バラを思わせる成分も鍵だった"
description: "ムスカリスと親品種の香りを16成分で再現。ローズオキシドとゲラニオールを除く実験から、ライチらしさを支える組合せが見えてきました。"
url: https://lechercheurdeparfum.com/muscaris-lychee-rose-oxide-geraniol/
date: 2026-10-13
modified: 2026-10-13
author: "Root"
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categories: ["香りの科学"]
tags: ["食べ物・暮らしの香り"]
type: post
lang: ja
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# ブドウなのにライチの香り。バラを思わせる成分も鍵だった

ブドウを嗅いでいるのに、ライチを思わせる。そんな香りは、ライチらしい一つの成分だけで説明できるのでしょうか。

白ブドウ品種「ムスカリス」を調べた2024年の研究は、ライチ様の香りに、ローズオキシドとゲラニオールの組合せが関わることを示しました。手がかりになったのは、香りを成分から組み直し、その一部を抜く実験です。ライチらしい成分を一つ抜いただけでは、予想したほど香りが弱まらないところに発見がありました。

## 新しいブドウの香りを、親品種と比べる

ムスカリスは、菌類による病気への強さと豊かな香りを組み合わせる目的で育成された品種です。母親側はソラリス、父親側はゲルバー・ムスカテラー。後者はマスカット系の白ブドウで、花や果実を思わせる香りで知られています。

研究者の目的は三つありました。ムスカリスの香りに寄与する成分を見つけること、父親品種ムスカテラーとの共通点と違いを調べること、そして特徴的なライチ様の香りが何から生まれるかを確かめることです。病気に強い品種の育種や、果実の香りがワインへどう移るかを考える基礎にもなります。

試料は、ドイツのフライブルクにある研究機関で2022年9月に収穫した両品種の果実です。どちらにも、はっきりしたライチ様の香りが認められました。ムスカリスだけに突然生まれた香りというより、親品種とのつながりを持つ特徴を調べた研究です。

## 機械で分け、人の鼻で「香る成分」を探す

まず果実から揮発成分を取り出し、ガスクロマトグラフィーで分離しました。分かれて出てくる成分を人が嗅ぐ方法を組み合わせ、実際ににおいを持つ部分を探します。抽出液を段階的に薄め、どこまで嗅ぎ取れるかも調べました。

こうして見つかったにおいのある成分は、ムスカリスで39、ムスカテラーで35でした。35は両方に共通し、全体としてよく似た構成です。ムスカリスの39成分のうち、38成分の構造が同定されました。

花やバラを思わせるゲラニオールは、両品種とも強く薄めた後まで検出されました。そのほか、草のようなヘキサナール、柑橘や花を思わせるリナロール、キュウリ様の成分などが見つかっています。果実全体がキュウリや草そのものに感じられるということではなく、ブドウの香りを分解すると、そう表現できる要素が現れるのです。

重要そうな20成分を定量すると、16成分が、水中で人が検知できる濃度の目安を上回っていました。濃度をこの目安で割った値が「におい活性値（OAV）」です。量が多い成分だけでなく、少なくても鼻が敏感に捉える成分を見つける手がかりになります。

ゲラニオールの量は、ムスカリスで約1,160µg/kg、ムスカテラーで約442µg/kg。一方、リナロールの主要な鏡像異性体はムスカテラーのほうが多く、よく似た香りの中にも配合比の違いがありました。

## 16成分で、ブドウの香りを組み直す

成分が見つかっただけでは、それらで果実の香りを説明できるかは分かりません。そこで研究者は、16成分を果実で測った濃度に合わせて混ぜ、酒石酸を含み、pHも果実に合わせた水溶液を作りました。

訓練を受けた14人が、草、花、ライチ、青リンゴなど9種類の香りを、0から3の尺度で評価しました。両品種の再現モデルには、草、花、ライチ、青リンゴの調和した香りがあり、ムスカリスで注目していたライチ様の特徴も表れました。

ここで試料の保存条件も大切です。成分の同定には時間がかかるため、多くの定量は凍結・解凍した果実で行われました。一部の変化しやすい青葉系成分は生果実でも測っています。生果実とモデルを同じ時点で直接比べることはできなかったため、別途、凍結・解凍した果実の濃度に合わせたモデルを作り、その果実と香りがよく対応することを確認しました。

## 一つ抜いても、二つ抜くと違う

ライチの香りの第一候補は、ローズオキシドでした。今回注目したのは、いくつかある立体構造のうち、花・ライチ様の香りを持つ（2S,4R）型です。分子の名前だけでなく、立体的な形まで区別して調べています。

ところが、16成分のモデルからこのローズオキシドだけを抜いても、ライチ様の香りの評価は有意には下がりませんでした。そこで、バラ様のゲラニオールも一緒に抜くと、ライチ様の評価が低下しました。低下幅は、0〜3の尺度でムスカリスが0.6、ムスカテラーが0.7で、どちらも統計的に有意でした。

ゲラニオールだけを抜いた場合にも、有意な低下はありませんでした。つまり、この混合物では、一方を除いただけでは保たれやすかったライチらしさが、二つを除くと弱まったのです。

ゲラニオール単体は、ライチというより花やバラと表現される成分です。それでも、混合された香りの中ではライチらしさに関わっていました。成分単体のにおいの名前だけから、混合物での役割を決められないことが分かります。

## 「二つでできた香り」より、組合せの中の役割

この結果は、ローズオキシドとゲラニオールを、ブドウのライチ様の香りに関わる重要な組合せとして位置づけます。ただし、再現モデルには、ほかに14成分も入っています。二つだけを混ぜれば果実の香り全体ができる、と調べたわけではありません。

また、片方を抜いたときに有意差がないことは、その成分が不要である証明ではありません。今回の人数、濃度、混合物の中で、明確な低下を捉えなかったという結果です。鼻の受容体でどのような相互作用が起きるかも、この研究では測っていません。

対象は1年、1か所で採れた果実でした。ワインへの移行や、どちらの香りが好まれるかは次の課題です。それでも、育種された品種の香りを、親品種との比較、化学分析、再現、成分の除去までつなげた点に価値があります。

## まとめ

ムスカリスと親品種ムスカテラーの香りは多くの成分を共有し、ゲラニオールなどの量に違いがありました。16成分の再現モデルからローズオキシドとゲラニオールを両方除くと、両品種のライチ様の香りが弱まりました。

ブドウの中の「ライチらしさ」は、一つの成分名だけでは捉えきれません。単体ではバラのように香る成分も、ほかの成分と一緒になると、果実らしさを支える。その役割を、実際に組み直して確かめた研究です。

著者の一人は中国国家留学基金管理委員会（CSC）の助成を受けています。著者は競合する金銭的利益なしと申告しています。

**参考文献**

Wang X, Frank S, Steinhaus M. (2024). Molecular Background of the Lychee Aroma of *Vitis vinifera* L. ‘Muscaris’. *Journal of Agricultural and Food Chemistry*, 72, 1674–1682. [原著論文](https://doi.org/10.1021/acs.jafc.3c08298)／[公開全文](https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10811687/)
