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title: "ジャスミン調の香料は、分子の形を選んで作れる？"
description: "同じつながり方の分子でも、立体é �置で香りは変わります。ジャスミン調香料Jessemalの狙った形を、é µ素と化学反応で作り分けた研究を紹介します。"
url: https://lechercheurdeparfum.com/jessemal-stereoisomer-chemoenzymatic-synthesis/
date: 2026-10-12
modified: 2026-10-12
author: "Root"
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categories: ["香りの科学"]
tags: ["香料を知る・つくる"]
type: post
lang: ja
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# ジャスミン調の香料は、分子の形を選んで作れる？

同じ原子が同じ順番でつながっていても、立体的な配置が違うと、香りの感じ方が変わることがあります。それなら、望ましい香りに関わる形を選んで作れないでしょうか。

Silvia Venturiらが2022年に発表した研究は、ジャスミン調の合成香料Jessemalを対象に、酵素反応と通常の化学反応を組み合わせた製造ルートを検討しました。焦点は、新しい香りを嗅ぎ比べることではなく、すでに注目されていた一つの立体配置を、狙って合成することです。

## 分子の「形」を選ぶとは

分子の立体異性体とは、原子のつながり方は同じでも、空間での配置が違うものです。なかには、右手と左手のように、鏡に映した関係にありながら重ね合わせられない組もあります。

Jessemalには、こうした配置を区別するうえで重要な位置が三つあります。今回の目標は「(3R,4R,5R)体」と呼ばれる形でした。RやSは、それぞれの位置で原子がどのように並ぶかを示す記号で、香りの強弱や良し悪しの点数ではありません。

この形は、2006年の先行研究で、比較した異性体の中でも好ましく、特徴的な花の香りを持つと評価されていました。2022年の論文はその結果を出発点にしています。今回新たに消費者を集め、誰もがこの形を最も好むと確かめたわけではありません。

## 二つの酵素で、立体配置を作り分ける

研究者らは、市販されている原料から、酵素に反応させるための中間体を用意しました。そこへ、二種類の役割の異なる酵素を順番に働かせます。

一つは、炭素同士の二重結合に水素を加える反応を助ける酵素です。もう一つは、続いてできる構造をアルコールへ変える反応を助けます。同じ容器の中で反応をつなぐことで、途中の物質を毎回取り出さずに、立体配置を作り込む設計です。

酵素は、反応する分子を特定の向きで受け入れやすいため、どちら側から反応が進むかを選ぶ手がかりになります。ただし、「この酵素なら、いつも同じ向き」と単純に決められるわけではありませんでした。

## 予想と違う形ができたことも、重要な発見

最初に有望と考えた酵素の組み合わせでは、反応はよく進んだものの、得られた中間体の立体配置が予想と違っていました。目的物の形を確かめると、三つの位置の相対的な並びが、合成計画に必要なものとは異なっていたのです。

そこで研究者らは、酵素の組み合わせを変えて調べ直しました。結晶のX線解析などで配置を確認し、FDR-MhaとEVO440という二つの酵素を組み合わせると、目標に進むための中間体が得られると分かりました。ここでの名前は、今回使った酵素を区別するものです。

研究は、二番目の酵素の選び方だけでなく、反応途中の分子がすでに持つ立体配置も、反応の向きを左右することを示しています。なお、市販酵素の詳しい構造が公開されていないため、酵素の内部で分子がどう収まっているかまでは決められませんでした。

## 次の難所は、分子の輪をどこから開くか

酵素で作った中間体は、さらに、酸素を含む小さな三員環を持つ物質へ変えました。この輪を開いて炭素の鎖をつなぐと、Jessemalの骨格へ近づきます。

ここでは、立体的な向きに加えて、「輪のどの位置に鎖がつくか」が問題になります。研究者らが炭素の鎖を加える反応を試すと、似た分子についての先行研究から予想される位置とは違う位置が、主な反応先になりました。

目的の位置につながった生成物と、もう一方の位置につながった生成物の比は、ある条件で82対18でした。完全に一種類だけができたわけではなく、目的のものを分離する操作も使っています。

この偏りを理解するため、反応が進む途中のエネルギーを計算しました。計算では、目的の位置へ進む道筋のほうが通りやすく、生成物の比も72対28と、実験と同じ方向の偏りになりました。数値が完全一致したわけではありませんが、どの反応経路が選ばれやすいかを説明する手がかりになっています。

別の試薬では反応先の選ばれ方が異なり、既存の説明に合う場合もありました。著者らは、分子の細かな構造と試薬の組み合わせによって、輪の開き方が変わることを、この研究のもう一つの成果として位置づけています。

## 最後の工程は95％、全工程では18％

目的の位置と立体配置を持つアルコールを得たあと、最後に酢酸の部分をつけて、狙ったJessemalへ変換しました。この最後の工程の収率は95％でした。

一方、市販の出発原料からすべての工程を通した全体の収率は18％です。各工程での反応や分離の損失が積み重なるため、最後の工程が高収率でも、原料の95％が最終香料になるとは限りません。

こうして研究者らは、目標とする立体配置に富むJessemalを得ました。価値は、目的の形を選ぶために、酵素の選択性と、化学反応の位置の選択性を一つのルートに組み込んだことにあります。

## 香料づくりに、どんな意味がある？

著者らは、香りへの寄与が大きい立体異性体を選べるようになれば、配合する原料の量を抑えられる可能性を研究の背景に挙げています。ただし、この論文では、実際の香水の使用量、環境中での分解、人体への影響を比較していません。狙った形を作れたことだけで、健康や環境へのリスクが下がったとは言えません。

また、酵素を使っていても、工程全体が酵素反応だけで進むわけではありません。複数の化学反応や精製も必要です。工業規模での費用や環境負荷を評価した研究ではなく、まずは目的の分子へ到達する合成の道筋を示した成果です。

研究ではPOR-LombardiaのVIPCAT事業による資金支援と、CINECAの計算資源の提供が記されています。著者らは、競合する金銭的利益はないと申告しています。

## まとめ

この研究は、先行研究で好ましい花の香りと評価されていたJessemalの立体異性体を、酵素と化学反応を組み合わせて合成しました。予想と異なる酵素の選択性を確かめ直し、さらに輪の開く位置を制御することで、目標へつながるルートを作っています。

香料を「何という物質か」だけでなく、「どの立体配置の物質か」まで選んで作る。そのための製造手法と、反応の選択性を理解する知識を、ともに前へ進めた研究です。

## 参考文献

Venturi, S., Trajkovic, M., Colombo, D., Brenna, E., Fraaije, M. W., Gatti, F. G., Macchi, P., & Zamboni, E. (2022). Chemoenzymatic Synthesis of the Most Pleasant Stereoisomer of Jessemal. *The Journal of Organic Chemistry*, 87(9), 6499–6503. [DOI: 10.1021/acs.joc.2c00427](https://doi.org/10.1021/acs.joc.2c00427) ／ [原著全文](https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9087343/)。原著のライセンス：CC BY 4.0。
