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title: "硫黄系の成分が、ワインのカシスらしさを引き出す"
description: "単独では硫黄系に香るDMSが、赤ワインの果実香モデルではカシスらしさを強めました。検出閾値と香調を調べた研究から、混ざることで変わる成分の役割を解説します。"
url: https://lechercheurdeparfum.com/dimethyl-sulfide-blackcurrant-wine-aroma/
date: 2026-10-13
modified: 2026-10-13
author: "Root"
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categories: ["香りの科学"]
tags: ["食べ物・暮らしの香り"]
type: post
lang: ja
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# 硫黄系の成分が、ワインのカシスらしさを引き出す

果実らしい香りを強めるのは、果実の香りがする成分だけとは限りません。2014年のワイン研究では、単独では硫黄系のにおいと評されたジメチルスルフィド（DMS）を果実香のモデルに加えると、黒い果実を思わせる印象が強まり、一定の濃度ではカシスらしさが増しました。

研究の焦点は、DMSが香りを見つけやすくする「量的な働き」と、どんな果実に感じられるかを変える「質的な働き」の両方です。ブレンドの中では、単独で嗅いだときと違う役割が現れることを丁寧に調べています。

## 12種類のエステルで、赤ワインの果実香を組み立てる

研究チームは、赤ワインに含まれる平均的な濃度をもとに、12種類のエステルを組み合わせました。酪酸エチル、ヘキサン酸エチル、酢酸イソアミルなどを含む、果実香の再構成モデルです。

土台には二つの液体を使いました。一つはアルコール分12％、pH3.5に調整した水とエタノールの溶液。もう一つは、元の香りをできるだけ取り除いた赤ワインです。後者は蒸発処理と吸着樹脂による処理を行い、アルコール濃度と液量を戻した、香りの弱い試料でした。こうして、単純な溶液とワイン由来の成分が残る液体の両方で、DMSの働きを比べました。

評価したのは、赤ワインの果実香を調べる経験があるボルドー大学の研究施設のスタッフです。16人のパネルが識別、閾値、香調の強さを調べ、8人のパネルが香りの記述を担当しました。果実のシロップ、リキュール、ジャムなどを、表現の基準として提示しています。

試料は黒いグラスに約50mL入れ、20℃で鼻から嗅いで評価しました。DMSは揮発しやすいため、分析で時間変化を確認し、試料を10分ごとに更新しました。飲んだときの味や好みを比べた試験ではなく、グラスから立つ香りの実験です。

## DMSそのものの見つけやすさも、背景で変わる

まず、DMSをどのくらい薄くしても見つけられるかを、3試料から異なる1試料を選ぶ方法で調べました。偶然の正答を補正して求めた閾値は、単純なアルコール溶液で1.74µg/L、そこに12成分の果実香を加えると2.80µg/L、脱香した赤ワインに果実香を加えた条件では3.67µg/Lでした。

同じDMSでも、一緒に存在する成分によって検出しやすさが変わったわけです。研究で添加効果を調べた5〜70µg/Lは、これらの閾値を上回ります。「無臭のDMSを入れた実験」と捉えると、この設計を読み違えてしまいます。

DMS単独の記述も調べています。10、30、70µg/Lの試料は主に硫黄系の言葉で表現され、低い濃度では軽い硫黄様、高い濃度では強い硫黄様・還元的なにおいへ変わりました。DMS単独に、明確な果実香があったわけではありません。

## 少ない果実香でも見つけられるようになった

次は、12成分からなる果実香のモデル自体を薄め、どこまで検出できるかを調べました。比較したのは、DMSを含まないアルコール溶液と、5µg/LのDMSを含むアルコール溶液です。

DMSのある条件では、比較用の背景試料にも同じDMSが入っています。したがって、DMSがある試料を選べば正解になる課題ではなく、その背景に加わった果実香を検出する課題です。

閾値に相当する果実香モデルの量は、50mLの背景液に対して、DMSなしでは1.80mL、DMSありでは0.55mLでした。約3分の1の量でも見つけられるようになったという、統計的に明確な差です。この比は閾値の比較であり、普段嗅ぐ香りがそのまま3倍強く感じられるという意味ではありません。

## とくに増したのはカシスらしさ

果実香のモデルにDMSを5、10、20、30、50、70µg/L加えて香調を調べると、単純なアルコール溶液では、どの添加濃度でも「黒い果実」全体の強さが無添加より高く評価されました。ただし、DMSを増やすほど評価が上がる関係ではなく、添加量の違いによる増強の程度はおおむね同じでした。

果実の種類ごとに見ると、変化は一様ではありません。カシスの強さが無添加より有意に高かったのは、アルコール溶液では5、10、20、30µg/L、脱香赤ワインでは5、10、20µg/Lの条件です。一方、ブラックベリー、イチゴ、ラズベリーの強さには明確な変化が報告されませんでした。

ここで原著の「黒い果実」全体と「ブラックベリー」一種類を区別することが大切です。広い香調のまとまりは強くなりましたが、その中のすべての果実が同じように強まったわけではなく、具体的にはカシスの印象が際立ちました。

## 香りの役割は、混ざる相手によって現れる

著者らは、DMSが単独で果実香を代表する成分なのではなく、ほかの香気成分との組み合わせを通じて、果実らしさを引き出す役割を持つと解釈しています。果実香の閾値を下げる働きと、カシスの方向へ印象を変える働きが、同じ研究の中で示されました。

さらに著者らは、ワインの熟成に伴うDMSや一部のエステルの増加が、果実香の発達に関わる可能性を論じています。ただし、今回測ったのは調製した混合物であり、同じワインを何年も追跡した熟成実験ではありません。

評価者は少人数の経験者で、果実香の配合も限定されています。市販ワインにはさらに多くの香りがあり、DMSの効果が出る濃度も背景で変わりました。高い濃度までカシス評価が上がり続けなかった結果は、量を増やすだけでは狙った香りにならないことを示唆します。

## まとめ

硫黄系の香りを持つDMSは、12成分の果実香モデルに加わると、より少ない量の果実香を検出できるようにし、一定範囲ではカシスらしさを強めました。ブラックベリー、イチゴ、ラズベリーには同じ変化が見られず、添加量が多いほどカシスらしくなる関係でもありませんでした。

ブレンドの中で果実香を支える成分が、それ単独でも果実のように香るとは限らない。これが、この研究から得られる興味深い発見です。

研究はボルドーワイン委員会（CIVB）の資金支援を受けました。原著本文には独立した利益相反声明は見当たりません。

**参考文献**

Lytra G, Tempere S, Zhang S, Marchand S, de Revel G, Barbe JC. Olfactory impact of dimethyl sulfide on red wine fruity esters aroma expression in model solution. *Journal International des Sciences de la Vigne et du Vin*. 2014;48(1):75–85. [doi:10.20870/oeno-one.2014.48.1.1660](https://doi.org/10.20870/oeno-one.2014.48.1.1660)
