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title: "体臭で、ほかの匂いの感じやすさは変わる？"
description: "歯科治療中の汗を提示すると、別の匂いを検出する感度は変わるのか。36人の実験と、汗の匂いや成分を調べた研究を紹介します。"
url: https://lechercheurdeparfum.com/anxiety-body-odor-detection-sensitivity/
date: 2026-10-12
modified: 2026-10-12
author: "Root"
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categories: ["香りの科学"]
tags: ["感じ方・記憶・気分"]
type: post
lang: ja
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# 体臭で、ほかの匂いの感じやすさは変わる？

誰かの体臭を感じたあと、周囲の別の匂いにも気づきやすくなることはあるのでしょうか。2025年にWunderらが発表した研究は、不安を感じる場面で採取した汗を使い、受け手が薄い匂いを見つける感度を調べました。

焦点は、汗そのものを強く感じるかではなく、その後に嗅ぐ別の匂いの検出です。研究者は行動実験に加え、汗の匂いを人が評価する検査と、成分の化学分析を組み合わせました。感情に関わる身体の化学的な手がかりが、周囲から情報を取り込む働きに関係するかを探る研究です。

## 歯科治療中の汗と、前夜の汗を比べる

汗を提供したのは、歯科治療に不安のある女性12人でした。治療中に脇の下の汗をパッドに集め、比較用には、治療前夜の睡眠中の汗も採取しました。研究では前者を「不安条件」、後者を「中性条件」と呼んでいます。

その汗の影響を調べた相手は、正常な嗅覚をもつ健康な成人36人で、女性と男性が18人ずつでした。全員が別々の4日間に、不安条件の汗、中性条件の汗、汗のついていないパッド、ホラー映像という4条件を経験しました。試す日の順序は、偏りを抑えるように無作為化しています。

汗は4人の提供者のパッド片を混ぜた試料として提示され、参加者には、どんな試料なのかを知らせませんでした。匂いの検査前に3〜5分間提示し、2つの検査の間にも再び提示しています。ホラー映像の条件は、自分が映像を見て不安になることと、他人の体から出た匂いを受け取ることを比べるために設けました。

## バラ様の匂いでは、より薄い濃度を検出できた

検査に使ったのは、バラのような匂いをもつフェニルエチルアルコール（PEA）と、n-ブタノールです。どちらも嗅覚研究で使われる物質で、濃度を変えながら、どのくらい薄くても匂いを検出できるかを測りました。

PEAでは、不安条件の汗を提示したときに、汗のないパッドのときよりも検出感度が高くなりました。検査の平均得点は12.3対10.7で、統計的に有意な差でした。この検査は、得点が高いほど低い濃度まで検出できる仕組みです。n-ブタノールでは、4条件による有意な違いは見られませんでした。

重要なのは、不安条件の汗と中性条件の汗の間には、どちらの物質でも有意な差がなかったことです。したがって、今回の結果だけでは、体臭一般の影響から「不安のときの汗に特有の影響」を切り分けられていません。

ホラー映像では質問票で不安の高まりが確認されましたが、匂いの検出感度の上昇は明確ではありませんでした。ただし、不安条件の汗とホラー映像を直接比べた差も有意ではありません。片方で差が出て、もう片方では出なかったことだけで、2つの仕組みが違うと断定はできません。

また、濃い試料を嗅いだときの匂いの強さや快さも尋ねましたが、不安条件の汗によって、両物質が一律に強く、あるいは心地よく感じられる結果ではありませんでした。薄い匂いを見つける感度と、はっきり感じられる匂いの強さや好ましさは、別に考える必要があります。

## 汗全体の印象と、成分の違いは同じではない

もうひとつの柱は、実験に使った汗が、どんな匂いと成分をもつかを確かめることでした。これは、感情の伝達に関わる候補物質を探すと同時に、参加者が何にさらされていたかを把握するためでもあります。

訓練を受けた9人の評価者は、汗らしさ、柑橘、グレープフルーツ、石けん、ろう、綿のような印象を使って試料を表しました。不安条件と中性条件の試料について、全体の匂いの特徴、強さ、快さには、統計的に有意な差がありませんでした。これは、成分まで同じだったという意味ではありません。

研究者は、成分を機器で分離したうえで、人の鼻でも匂いを確かめる方法を用いました。さらに試料を段階的に薄め、どの成分の匂いが残るかを調べています。その結果、不安条件ではドデカン酸や汗臭に関わる成分、中性条件ではテトラデカン酸やパチュリアルコールが、相対的に匂いに寄与する候補として挙がりました。一部の同定は暫定的です。

提供者ごとの試料を質量分析でも調べると、揮発性成分の構成に違いを示す手がかりが得られました。ただし、匂いを分離して調べた試料は、各条件で混合した1試料ずつです。個々の成分を受け手に提示して感度の変化を再現したわけではなく、「不安を伝える分子」が特定されたわけではありません。

混ざったまま嗅ぐ場合と、分けて嗅ぐ場合では、成分同士が匂いの印象を強めたり弱めたりする可能性があります。著者らは、全体の印象に差がなくても成分の違いが見られた理由として、こうした混合の働きや、個々の成分が感じられる濃度に達しているかを挙げています。

## 危険への備えという仮説と、残る課題

著者らは、他人の不安に関わる化学的な手がかりを受け取ることで、周囲の情報を取り込みやすくなり、脅威に備える働きにつながる可能性を考えています。PEAで見られた感度の上昇は、その考えに沿う結果です。ただし、危険を早く発見できたか、逃げる行動が変わったかは調べていません。

なぜPEAだけで差が出たのかも未解明です。快さによる嗅ぎ方の違い、測定値のばらつき、汗の成分と検査の匂いの相互作用や慣れなど、複数の説明が考えられます。受け手のホルモンや脳の活動を介した仕組みも、今回直接確かめられたものではありません。

比較用の汗を採ったのは治療の前夜なので、その時点ですでに不安があった可能性があります。また、睡眠中と治療中では採取時間や環境が異なり、香りつき製品の残りなども成分に影響しえます。綿のパッドが成分を保持するしかたにも偏りがあり、採取方法自体の検討が必要です。

提供者は女性12人、受け手は36人、検査の匂いは2種類に限られます。著者らは、人数と匂いの種類を増やし、採取時間などを揃えて確かめることを提案しています。火災や腐敗した食べ物などに関わる匂いを調べれば、危険への備えという仮説に、より直接近づけるかもしれません。

## まとめ

歯科治療中に集めた汗を提示したあと、受け手は汗のない条件よりも、薄いバラ様の匂いを検出しやすくなりました。一方、別の匂いでは差がなく、前夜に集めた汗との差も明確ではありませんでした。

この研究が示したのは、他人の体から出る化学的な手がかりと、周囲の匂いを感じ取る感度を、一緒に調べる道筋です。行動の変化だけでなく、実際に提示した匂いの成分を確かめることで、感情と嗅覚の関係を、具体的な分子や条件へとつなげていく土台になります。

## 参考文献

Wunder, A., Bürkel, N., Guder, I., Zorzin, J. I., Mühle, C., Loos, H. M., & Freiherr, J. (2025). Enhanced sensitivity to odors due to chemosignals associated with anxiety. *Communications Chemistry*, 8, 129. [DOI: 10.1038/s42004-025-01512-3](https://doi.org/10.1038/s42004-025-01512-3) ／ [原著全文](https://www.nature.com/articles/s42004-025-01512-3)。原著：© The Author(s) 2025, [CC BY 4.0](https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/)。
