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title: "精油のアネトールは、由来を見分けられる？"
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date: 2026-10-12
modified: 2026-10-12
author: "Root"
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categories: ["香りの科学"]
tags: ["香料を知る・つくる"]
type: post
lang: ja
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# 精油のアネトールは、由来を見分けられる？

フェンネル、スターアニス、アニスは、違う植物ですが、精油には共通してアネトールが多く含まれます。では、精油に入っているアネトールが、表示された植物から来たものか、別の植物や合成品から加えられたものかを調べられるでしょうか。

Brett J. Murphyらが2024年に発表した研究は、精油全体の成分構成と、アネトールを構成する原子の特徴を組み合わせ、この問題に取り組みました。目的は、精油の表示と中身の整合性を確かめる分析法を検討することです。合成香料の危険性や、天然精油の健康効果を比較した研究ではありません。

## 天然の参照15試料、合成の参照5試料

研究者らは、フェンネル、スターアニス、アニスの原料から、それぞれ5試料ずつ、計15試料の精油を研究室で蒸留しました。これらを、由来が分かっている天然精油の参照として使っています。合成アネトールの参照品も、5試料購入しました。

さらに、店舗やオンラインで販売されている精油を30試料集めました。内訳はフェンネル11、スターアニス8、アニス11です。参照と市販品を合わせた50試料を、二つの分析法で調べました。

参照精油の原料産地には、エジプト、トルコ、スペイン、中国、ベトナム、欧州やタスマニアなどが含まれます。ただし、世界のあらゆる産地や栽培条件を網羅したものではありません。

## まずは、ほかの成分の組み合わせを見る

最初に使ったのはGC/MSです。精油の成分を分け、それぞれが何かを調べる方法です。主成分のアネトールだけでなく、一緒に含まれる成分の並びを見ることで、植物の種類について手がかりが得られます。

今回の参照試料では、フェンネルにはフェンコン、スターアニスにはリナロール、α-テルピネオール、フォエニクリンの組み合わせが見られました。アニスには、γ-ヒマカレンなどが手がかりになりました。

ただし、一つの成分が見つかっただけで由来を決めるわけではありません。リナロールやα-テルピネオールはほかの精油にも含まれるため、複数の成分がそろうか、あるはずの成分が欠けていないかを合わせて考えます。

市販品の中には、精油の成分に加えて、希釈に使われるクエン酸トリエチルなどが多く含まれる試料がありました。また、フェンネルとして売られた一試料では、フェンネルの手がかりが欠け、スターアニスの成分の組み合わせと希釈剤が見られました。

この成分分析から、著者らは30試料中6試料について、混和や希釈があると判断しました。ただし、成分の並びだけでは、加えられたアネトールが別の植物由来か、合成由来かまで絞れない場合がありました。

## 同じ分子でも、原子の重さの比に手がかりがある

そこで使ったのが、安定同位体比の分析です。同じ炭素や水素にも、重さが少し違う原子があります。たとえば炭素12と炭素13は、どちらも炭素ですが、原子核の中の中性子の数が異なります。

こうした原子が含まれる割合は、もとになる原料や、植物が育った環境、作られる過程によって変わることがあります。分子のつながり方が同じアネトールでも、この比率を調べると、成分名だけでは分からない由来の手がかりになるのです。

研究では、アネトールを分離してから、炭素と水素の安定同位体比を測るGC/IRMSを使いました。各試料を3回分析して、測定の再現性も確認しています。3回の測定は、別々の市販品が3本あるという意味ではありません。

## 水素の比率だけでは、判定しにくかった

今回の参照試料では、炭素と水素の比率を合わせて見ると、合成品と天然精油の分布に違いが見られました。しかし、天然のフェンネルと、ほかの二つの精油の範囲には重なりもありました。

市販試料に参照範囲をそのまま当てはめると、同位体データだけでは83％が範囲の外に出ました。著者らは、これを「83％が偽物」とは解釈していません。大きな理由は、水素同位体比が、今回の限られた参照で捉えきれない値を示したことです。

水素の比率は、降水や海からの距離など、植物が使う水の由来とも関係します。天然と合成の範囲が重なることもあり、水素だけを一本の境界線にして、由来を決めるのは難しいと結論づけています。

## 成分と炭素の比率を合わせると、判断が進んだ

炭素の安定同位体比は、成分分析で見つかった疑問を絞り込むのに役立ちました。たとえば、組成だけでは加えられたものの由来がはっきりしなかったアニスの3試料について、著者らは合成アネトールが使われた可能性を支持する結果と判断しました。

さらに、成分構成だけでは異常を見つけにくかったスターアニスとフェンネル各1試料でも、炭素の比率から、合成アネトールの添加が疑われました。元の植物の特徴的な成分を残したまま、主成分を加えて量を増やした可能性があります。

最終的に、著者らが混和・希釈ありと判断したのは、30試料中8試料、約27％でした。含まれる問題は、希釈剤の添加、別の天然原料の使用、合成アネトールの添加などで、一つに限られません。これは今回集めた30試料の結果で、精油市場全体の割合を示す数字ではありません。

## 万能な境界線ではなく、証拠を重ねる方法

炭素同位体比も、どんな条件でも天然と合成を完全に分ける万能な検査ではありません。論文が比較した過去の研究では、合成品と天然品の炭素の値にも重なりがあります。参照試料の由来や製造経路を広げ、成分構成と合わせて読むことが重要です。

また、今回の研究は、何が加えられたかを推定しましたが、どれだけの割合が混ざっているかを確定したものではありません。著者らは今後、既知の割合で混ぜた試料を作り、混合率を推定できるか、どの程度の少量まで検出できるかを調べる必要があるとしています。

真正な精油にも、産地、品種や成分型、栽培、蒸留の条件による自然な違いがあります。その幅を十分に知らずに、参照範囲を外れたという理由だけで不正を断定しないことが、分析の精度を高めるうえで大切です。

研究費はYoung Living Essential Oilsから提供され、著者らはD. Gary Young Research Instituteに所属しています。論文では利益相反なしと申告し、資金提供者は研究の設計、データの収集・解析、執筆、公表判断に関与していないと記されています。

## まとめ

精油に含まれるアネトールの由来を調べるには、主成分の名前だけでなく、周囲の成分の組み合わせと、原子の同位体比を重ねる方法が役立ちました。今回の試料では、成分分析に炭素同位体比を加えることで、見逃しやすい添加の可能性も見えてきました。

一方、水素同位体比だけでは、天然のばらつきと添加をうまく分けられませんでした。多様な参照試料と、混合率が分かる検証試料を増やすことが、表示された原料と中身の整合性を、より確かに評価する次の段階になります。

## 参考文献

Murphy, B. J., Wilson, T. M., Ziebarth, E. A., Bowerbank, C. R., & Carlson, R. E. (2024). Authentication of Fennel, Star Anise, and Anise Essential Oils by Gas Chromatography (GC/MS) and Stable Isotope Ratio (GC/IRMS) Analyses. Plants, 13(2), 214. DOI: [10.3390/plants13020214](https://doi.org/10.3390/plants13020214) ／ [原著全文](https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10818908/)。原著のライセンス：CC BY 4.0。
