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title: "龍涎香の香りのもとを、酵素と光でつくる"
description: "改変é µ素とå ƒのé µ素を組み合わせ、アンブレインの収率を高めた研究。å ‰で生まれる香り成分の違いと、培養細胞で調べた作用も紹介します。"
url: https://lechercheurdeparfum.com/ambrein-enzymes-light-aroma/
date: 2026-10-13
modified: 2026-10-13
author: "Root"
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categories: ["香りの科学"]
tags: ["香料を知る・つくる"]
type: post
lang: ja
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# 龍涎香の香りのもとを、酵素と光でつくる

龍涎香（りゅうぜんこう）の香りを、天然の塊に頼らずつくる。その足掛かりになるのが、主要成分のアンブレインを酵素で合成し、光を使って香りの成分へ変える方法です。

2020年の研究では、細菌由来の酵素を改変し、別の酵素と組み合わせることで、試験管内のアンブレイン収率を46.0％まで高めました。さらに、光の当て方によって生成する揮発成分の組成が変わることを調べています。研究は香料づくりだけでなく、得られたアンブレインの培養細胞への作用も対象にしました。

## 香りのもとをつくり、光で香りへ変える

龍涎香に含まれるアンブレインは、光酸化によって分子が切れ、より小さな揮発成分を生じます。研究者が目指したのは、この原料を効率よく用意し、香りの成分へ変換できる人工的な経路を組み立てることでした。

出発点はスクアレンです。Bacillus megateriumという細菌に由来する環化酵素BmeTCを使い、細長い分子の両端に環状の構造をつくる反応を進めました。酵素を大腸菌でつくって取り出し、アミノ酸の置き換えが生成物にどう影響するかを、ガスクロマトグラフィーや質量分析などで確かめています。

## 改変酵素と元の酵素を組ませると、収率が上がった

以前の改変酵素D373Cに、もう一つの置き換えY167Aを加えると、精製酵素を用いた比較でアンブレイン収率は2.2％から21.5％へ上がりました。この二重変異酵素は、中間体をアンブレインへ変える段階に強みがありました。

そこで、最初の段階を進める野生型、つまり元の酵素を組み合わせました。酵素の総量をそろえた条件でも収率は46.0％となり、以前の改変酵素の約20倍になりました。得意な段階が違う酵素を分担させたことが、改善につながっています。

これは精製した酵素を使う試験管内の結果です。論文では酵母による生産量の向上も展望として論じていますが、大量培養での生産性は今後確かめる課題として残っています。また、この人工経路は、マッコウクジラの体内で起きる反応経路を特定したものではありません。

## 光の条件によって、香りの組成も変えられる

合成したアンブレインには、紫外線を6週間当てる方法と、光増感剤を加えて可視光を4時間当てる方法を試しました。光増感剤は、光のエネルギーを利用して反応を進めるための物質です。ローズベンガル、テトラフェニルポルフィン、メチレンブルーの3種類を比較しました。増感剤によって溶媒などの条件も異なるため、増感剤だけの差を切り分けた比較ではありません。

紫外線の条件では、測定された揮発成分の収率はおよそ1％でした。光増感剤と可視光を使う条件では8〜15％となり、未反応のアンブレインも少なくなりました。この値は成分生成の指標で、においの強さをそのまま表す数値ではありません。

生成物にはアンブロックスなど既知の4成分に加え、構造が未確定の6成分が見つかりました。紫外線とローズベンガルの条件は、比較した天然龍涎香2試料に比較的近い組成を示しました。一方、ほかの光増感剤では特定成分の割合が高まり、組成が変わりました。

溶媒を蒸発させた濾紙での香りの比較でも、紫外線とローズベンガルの生成物は天然試料に近く、ほかの条件は異なると報告されています。ただし、この香りの比較には評価人数や統計的な検定が示されていません。天然に近づける方向と、異なる組成をつくる方向の両方が見えてきた、という段階です。

## 培養細胞では、二つの異なる作用も調べた

アンブレインを用意しやすくなることには、生物学的な作用を調べやすくなる意味もあります。研究では、骨に関係する細胞と、人由来の神経芽細胞を用いました。

骨の実験では、骨をつくる側の骨芽細胞の指標に有意な変化は見られませんでした。一方、骨を吸収する側の破骨細胞へ分化する過程は、アンブレインを加えると促進されました。骨芽細胞の変化は確認されず、破骨細胞への分化では促進が見られたという結果です。

神経芽細胞の実験では、アンブレインを24時間作用させた後に培地を取り除き、アミロイドβを加えました。その結果、アミロイドβによって誘導される細胞死が減りました。いずれも物質を培養細胞へ加えた実験で、香りを嗅いだ人への効果や治療効果を検証した試験とは分けて読む必要があります。作用を担う分子の仕組みも、まだ明らかではありません。

## まとめ

この研究は、アンブレインをつくる工程と、そこから揮発成分を生む工程の両方を前進させました。改変酵素と野生型酵素の組み合わせは、以前の改変酵素より収率を高め、光増感剤を含む反応条件によって、生成する香り成分の組成が変わりました。

さらに、アンブレインは培養細胞で破骨細胞への分化を促し、別の実験ではアミロイドβによる細胞死を減らしました。香料の原料を安定して用意する技術は、香りづくりと分子の作用の研究を、同時に進める基盤にもなります。

研究は日本学術振興会の科研費と新潟大学の学際融合研究支援を受けています。ADEKAから、本研究の方法で製造・単離したアンブレインの一部提供がありました。著者らは利益相反なしと申告しています。

**参考文献**

Yamabe Y, Kawagoe Y, Okuno K, et al. Construction of an artificial system for ambrein biosynthesis and investigation of some biological activities of ambrein. Scientific Reports. 2020;10:19643. [原著論文](https://doi.org/10.1038/s41598-020-76624-y)
